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スチームトラップが1台故障すると年間いくら損する?蒸気ロスを金額に換算する方法

2026.10.21

蒸気管理

監修:協和機工株式会社 代表取締役 三家本輝男

「スチームトラップから蒸気が漏れている。でも、1台だけなら大きな損失ではないのでは?」

工場の設備保全や省エネを担当していると、不具合は分かっていても、対策の優先順位や修理費用の妥当性を説明しにくいことがあります。

例えば、蒸気が毎時10kg漏れ、その状態が年間4,000時間続くと仮定すると、年間の漏れ量は40トンです。蒸気単価を7円/kgと置けば、金額換算は年間28万円になります。ただし、これは計算方法を示す仮定例です。すべての故障トラップで同じ損失が発生するわけではありません。

今回は、スチームトラップ1台の蒸気ロスを年間の金額に換算し、修理・交換を判断するための考え方を紹介します。

この記事の要点

  • 年間の蒸気漏れ損失は「漏れ量×漏れが続く時間×蒸気単価」で概算できます。
  • 毎時10kg・年間4,000時間なら年間40トン。単価2円/kgで8万円、7円/kgで28万円という仮定例になります。
  • 修理・交換の判断には、改善後に減る蒸気量と削減可能な費用を使い、安全性や生産への影響も確認します。

1台の故障でも、損失額は運転条件で変わる

スチームトラップの故障で蒸気が流出すると、必要な工程で使う前にエネルギーを失うことになります。年間の損失を考える際は、故障の台数だけでなく、漏れ量と、その状態がどれだけ続くかを見る必要があります。

米国エネルギー省(DOE)の技術資料も、漏れ量、年間運転時間、蒸気の価値を掛け合わせて、故障トラップの修理による年間の削減額を試算しています。出典:DOE「Inspect and Repair Steam Traps」Steam Tip Sheet #1、2012年1月、1ページ。

一方、蒸気を止められない故障と、ドレンを排出できない不具合では、評価すべき影響が異なります。この記事の計算は、蒸気漏れによる損失を扱うものです。ドレン排出不良による生産への影響は、別に確認します。

故障の種類や点検の必要性は、スチームトラップの故障率は?米国DOE資料と海外事例で見る工場の蒸気ロスで解説しています。

年間損失額は「漏れ量×時間×単価」で概算する

年間の蒸気漏れ損失額(円/年)
= 蒸気漏れ量(kg/h)× 年間の漏れ継続時間(h/年)× 蒸気単価(円/kg)

まずは次の3項目を揃えます。

項目確認すること注意したいこと
蒸気漏れ量調査・測定や条件に合う方法で推定したkg/h配管の口径や外観だけで決めない
年間の漏れ継続時間対象配管に蒸気が供給され、漏れが続く時間工場全体の稼働時間と一致するとは限らない
蒸気単価自社で把握する蒸気1kg当たりの費用単価に含む費用と算定期間を明記する

漏れ量や蒸気条件が変わる場合は、期間や運転状態ごとに分けて計算し、合計します。点検日に漏れを見つけても、いつから漏れていたか分からなければ、過去1年間の実損失を確定することはできません。「同じ状態が1年続いた場合の換算額」として扱います。

仮定例:毎時10kgの漏れが年間4,000時間続いたら

説明のため、蒸気漏れ量を10kg/h、漏れ継続時間を4,000h/年、蒸気単価を7円/kgと仮定します。

10kg/h × 4,000h/年 = 40,000kg/年(40トン/年)

40,000kg/年 × 7円/kg = 280,000円/年(28万円/年)

7円/kgは自社の単価に置き換えるための仮定値で、一般相場や最新の燃料価格を示すものではありません。同じ漏れ量・時間でも、単価が2円/kgなら年間8万円です。

仮定例:蒸気漏れ毎時10kg、年間4000時間、単価7円なら年間28万円。単価2円なら8万円
計算方法を示す仮定例。漏れ量・時間・単価は説明用の設定で、実測値や削減実績ではありません。

漏れ量と蒸気単価が変わると、年間でいくらになる?

年間の漏れ継続時間を4,000時間に揃え、漏れ量と蒸気単価を変えると、次のようになります。

仮定する漏れ量年間の漏れ量2円/kgの場合4円/kgの場合7円/kgの場合
5kg/h20トン/年4万円/年8万円/年14万円/年
10kg/h40トン/年8万円/年16万円/年28万円/年
20kg/h80トン/年16万円/年32万円/年56万円/年

すべて仮定による計算です。故障トラップの標準的な漏れ量や、特定製品の効果を示す表ではありません。

自社の単価が分からない段階では、複数の単価で幅を見て、確認後に置き換えると検討を進めやすくなります。また、年間4,000時間の設備と、2,000時間の設備では、ほかの条件が同じでも年間換算額は2倍違います。

実測の事例:トラップ1台で年間約44万円の蒸気ロス

協和機工が国内の工場で行ったドレン捕集試験(スチームトラップから排出されるドレンを水を張った容器に集め、質量と温度の変化から蒸気漏れ量を求める方法)の結果から、2つの例を紹介します。工場が特定されないよう、圧力・時間・単価などの条件はおおよその値で示しています。漏れ量と金額は測定結果をもとに丸めた値です。

項目事例A事例B
測定した設備ある工場の蒸気主管(0.5MPa級)別の工場の蒸気主管(0.6MPa級)
トラップの形式ディスク式フロート式
蒸気漏れ量(平均)約6.7kg/h約1.4kg/h
年間の運転時間約8,600時間(24時間操業)約8,200時間(24時間操業)
蒸気単価(各工場の設定)7円台/kg6円台/kg
年間の漏れ量約58トン/年約12トン/年
年間の損失額約44万円/年約7.6万円/年

事例Aは、蒸気主管のディスク式トラップ1台で、3分間の捕集を6回行った平均が毎時約6.7kgの漏れでした。仮定例の毎時10kgより漏れ量は少ないものの、24時間操業で年間の運転時間が長いため、年間の損失額は約44万円と仮定例を上回りました。

事例Bは、試験前はほぼ吹き放しの状態で、調整後に作動が戻ったフロート式トラップです。作動が戻った状態でも毎時約1.4kgの漏れが残り、年間では約7.6万円に相当しました。外から見て正常に戻ったように見えても、実測すると漏れが残っている場合があります。

いずれも特定の設備・運転条件での測定結果で、他の設備で同じ金額になることを示すものではありません。

「漏れている蒸気の金額」と「減らせる支出」を分ける

投資判断では、漏れた蒸気を金額に換算するだけでなく、改善後に実際に減らせる費用を確認します。

社内の蒸気単価が、人件費、設備の減価償却費などの固定費を含む平均単価なら、その全額が修理後に減るとは限りません。対策の費用対効果には、燃料費など、蒸気使用量の減少に応じて削減できる費用をもとにした単価を使います。水や薬品なども、実際に減る範囲を確認して算入します。

また、ドレン回収系へ流れ込んだ蒸気の熱がどこで利用されているかなど、回収条件によっても正味の効果は変わります。漏れ量の減少を、そのまま同量のボイラー蒸気製造量の減少と見込めるかを確認しましょう。

ここでは、こうした条件を踏まえて改善前後で減る蒸気量を「正味の蒸気削減量」と呼びます。効果の試算では、この量と削減可能な単価を組み合わせます。

修理・交換の費用は、正味の削減額と比較する

対策にかかる費用には、部品代だけでなく、調査、施工、設備停止に伴う費用なども含めます。そのうえで、正味の年間削減額と比較します。

単純回収期間(年)
= 対策費用(円)÷ 年間の正味削減額(円/年)

例えば、正味の蒸気削減量が10kg/h、年間4,000時間、削減可能な蒸気単価が7円/kg、対策費用が8万円と仮定します。追加の年間維持費がなければ、年間の正味削減額は28万円で、単純回収期間は約0.29年、約3.4か月です。

同じ条件で単価を2円/kgにすると、年間削減額は8万円、回収期間は1年になります。いずれも計算用の仮定で、施工の見積額や回収期間の保証ではありません。対策後に追加の維持費が発生する場合は、年間削減額から差し引いて考えます。

仮定例:対策費用8万円、正味の蒸気削減量毎時10kg、年間4000時間では単価2円で回収1年、7円で約3.4か月
追加の年間維持費をゼロとした単純回収の仮定例。漏れ量の全量を削減できるという保証や、工事費の目安ではありません。

回収期間に加え、安全性、品質、生産への影響、修理の実施時期を合わせて判断することが大切です。

自社の試算に必要な情報を揃える

最初からすべての数字を確定する必要はありません。まず、次の情報を設備ごとに整理してみましょう。

  • 設置場所、トラップの形式・用途、点検日と判定結果
  • 蒸気漏れ量と、その測定・推定方法
  • 蒸気圧力、出口側の圧力、ドレン回収の有無
  • 蒸気供給時間と、季節・生産条件による違い
  • 自社の蒸気単価、算定期間、含まれる費用
  • 対策費用、改善後に見込む正味の削減量と維持費

湯気の量だけで漏れ量を決めないことも重要です。正常なドレン排出でもフラッシュ蒸気(再蒸発蒸気)が出るため、見た目だけでは生蒸気の漏れと区別しにくいからです。また、蒸気とドレンは同じ温度で共存しうるため温度だけでは判断しにくく、超音波による点検も判定には経験が必要とされます。形式や使用条件に応じて、複数の方法を組み合わせて確認します。出典:Spirax Sarco「Testing and Maintenance of Steam Traps」。

改善後は、同程度の生産・運転条件で状態や燃料使用量を確認し、試算と実際の変化を照らし合わせます。

スチームセーバーを検討する際も、現場の条件から

修理や交換では、現在の機器を修復する方法と、用途に合う機器へ更新する方法を比較します。

協和機工が取り扱うスチームセーバーは、主管・トレース管向けの長期耐久型スチームトラップです。適用可否は、設置場所、蒸気条件、ドレン量などを確認して判断します。

同ページでは、実設備を使うドレン捕集試験と、蒸気ロスや年間損失、導入効果を整理する技術レポートもご案内しています。試験の適用条件や費用は個別にご確認ください。本文の仮定例を、そのまま導入効果や試験結果として使うことはできません。

スチームセーバーについて詳しく見る

よくある質問

Q. スチームトラップが1台故障すると、必ず年間28万円損しますか?

A. いいえ。28万円は、毎時10kgの漏れが年間4,000時間続き、蒸気単価が7円/kgという仮定の換算額です。漏れ量、時間、単価を自社の条件に置き換えて計算します。

Q. 蒸気単価が分からない場合、何円で計算すればよいですか?

A. 一律の単価は使わず、自社の管理資料や燃料使用量、蒸気製造量などを確認します。未確定の間は複数の仮定値で幅を示し、金額換算と削減可能額のどちらを計算しているかを明記します。

Q. 工場が24時間操業なら、年間8,760時間で計算できますか?

A. 対象配管への蒸気供給と漏れが年間を通じて続く場合の換算には使えます。ただし、工場が動いていても対象設備の蒸気が止まる時間は除きます。過去の故障期間が不明なら、実損失ではなく年間換算とします。

Q. 漏れ量が分かれば、交換後の削減額も確定しますか?

A. 確定しません。改善後の漏れや回収条件、ボイラー運転への影響、削減可能な費用を確認する必要があります。試算では正味の削減量を使い、改善後の確認で見直します。

1台の不具合を、対策の判断材料に変える

スチームトラップの蒸気漏れは、漏れ量に時間と単価を掛けることで、年間の金額として説明できます。その際は、数字の出し方と条件を揃え、漏れの換算額と正味の削減額を区別することが大切です。

「漏れているから交換したい」から、「どれだけ損失があり、どの費用を減らせるか」へ。自社の条件を揃えることが、対策の優先順位を決める第一歩になります。

「自社のトラップの漏れや使用条件を整理したい」「修理・交換の効果を確かめたい」という方は、協和機工へご相談ください。

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参考資料

  1. 米国エネルギー省(DOE)「Inspect and Repair Steam Traps」Steam Tip Sheet #1 — 2012年1月、1ページ「Example」。漏れ量・年間時間・蒸気の価値による試算方法。本文の日本円の数値は独自の仮定例。
  2. Spirax Sarco「Testing and Maintenance of Steam Traps」 — 温度による判定の限界、超音波トラップテスターなど点検方法の考え方(英語)。
  3. 協和機工「スチームセーバー」 — 製品の用途、ドレン捕集試験と技術レポートの案内。

資料確認日:2026年10月20日。

監修:協和機工株式会社 代表取締役 三家本輝男

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