Column 技術・業界コラム
2026.10.08
監修:協和機工 菊本佑希(ファシリティーソリューショングループ:リーダー)
工場の省エネで、コンプレッサーのエア漏れと同じように確認したいのが、蒸気設備のスチームトラップです。ボイラーで燃料を使ってつくった蒸気も、トラップの不具合によって、必要な場所で熱を使い切る前に流出してしまうことがあります。
では、スチームトラップの故障は、海外でどの程度見つかっているのでしょうか。米国エネルギー省(DOE)の資料と海外工場の調査事例から、工場の「見えない蒸気ロス」を考えます。
この記事の要点
蒸気は、配管で熱を失ったり、製造設備で熱を渡したりすると、水に戻ります。この凝縮水が「ドレン」です。
スチームトラップは、ドレンを排出しながら、蒸気の流出を抑える役割を担います。蒸気配管や加熱設備を適切に運転するための、小さくても重要な機器です。点検では、蒸気を漏らしていないか、ドレンを排出できているかを確認します。
DOEの技術資料『Inspect and Repair Steam Traps』では、3~5年間メンテナンスされていない蒸気システムでは、設置されたスチームトラップの15~30%が故障し、生蒸気がドレン回収系へ漏れている可能性があるとしています。
また、定期的なメンテナンス計画があるシステムでは、漏れているトラップの割合は全体の5%未満であるべきだとしています。出典:DOE「Inspect and Repair Steam Traps」Steam Tip Sheet #1、2012年1月、1ページ。
ここでいう「15~30%」は、毎年その割合が新しく壊れるという意味ではありません。長期間未整備という条件で、設置台数のうち故障している可能性のある割合です。「5%未満」も、定期管理のある設備について示した漏れトラップの目安であり、すべての工場で達成されている実測値ではありません。
100台のトラップがある設備に置き換えると、未整備の条件では15~30台に相当します。これはDOEの割合を100台に換算した説明例で、特定の工場の診断結果ではありません。自社設備の状態は、点検で確かめる必要があります。

スチームトラップメーカーのSpirax Sarcoは、自社が調査した工場の事例を公開しています。
| 調査事例 | 設置台数 | 報告された開放故障の割合 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 化学工場 | 1,344台 | 10.94% | Spirax Sarco「Chemical Plant」 |
| ペルーの繊維工場 Sudamericana de Fibras | 約400台 | 30% | Spirax Sarco「Sudamericana de Fibras」 |
「開放故障」とは、トラップが開いた状態で正常に蒸気を止められなくなった故障です。両事例の数値は、調査を実施したメーカーが報告した個別工場の結果です。
設備の用途や使用条件、管理状況が異なるため、世界全体の平均故障率や、日本の工場の故障率として読み替えることはできません。ただ、実際の調査で一定数の開放故障が見つかっていることは、外観や設備の稼働だけではトラップの健全性を判断しにくいことを考えるきっかけになります。
トラップが蒸気を止められなくなると、ドレンとともに生蒸気が下流へ流れます。生蒸気とは、ドレンが再蒸発したものではなく、供給された蒸気そのものです。
蒸気がドレン回収配管へ流れ込む場合、工場の外に大きな湯気が見えるとは限りません。設備が動き続けていても、蒸気ロスが続いている可能性があります。開放故障は、ボイラー燃料の追加消費など、運転コストが増える原因になります。出典:DOE「Inspect and Repair Steam Traps」、Spirax Sarco「Chemical Plant」。
トラップが閉じたままになったり、詰まったりすると、ドレンを排出できなくなります。配管や設備内のドレン滞留は、加熱効率の低下やウォーターハンマーにつながる可能性があります。ウォーターハンマーは、配管内で生じる衝撃現象で、設備や配管に損傷を与えることがあります。出典:Spirax Sarco「Chemical Plant」。
蒸気漏れが少ないことだけで、正常とは判断できません。省エネと安定運転の両方のために、漏れと排出不良を分けて確認する必要があります。

ドレンは、圧力が下がると一部が再蒸発し、「フラッシュ蒸気」を発生させます。そのため、湯気が見えることだけで、生蒸気が漏れているとは言えません。
また、温度だけで正常と蒸気漏れを区別するのも困難です。温度に加えて、作動音や振動、蒸気圧力や使用状況などを照らし合わせて判断することが大切です。
「熱いから正常」「湯気があるから故障」と決めつけず、トラップの形式と運転条件に合った点検方法を選ぶことが大切です。
まずは、工場内のスチームトラップについて、次の情報を整理してみましょう。
DOEは、定期的で体系的な点検・試験・修理の仕組みと、エネルギーや費用の削減を記録する仕組みを勧めています。出典:DOE「Inspect and Repair Steam Traps」Suggested Actions。
台数が分かっていても、「そのうち何台が正常か」が分からなければ、対策の優先順位を決めにくくなります。まずは現在の状態を把握し、漏れ量や運転時間を踏まえて、損失が大きい箇所から改善を検討しましょう。
工場全体で省エネの対象を整理したい方は、工場の省エネは何から始める?エア・蒸気・電気のムダを見える化もご覧ください。

蒸気ロスの対策では、不具合のあるトラップへの対応と合わせて、その用途に合った機器か、点検や交換を続けやすいかも確認したいところです。
協和機工が取り扱うスチームセーバーは、主管・トレース管向けの長期耐久型スチームトラップです。シンプルな孔構造によって、蒸気ロスとメンテナンス負担の低減を目指す選択肢としてご紹介しています。
導入を検討する際は、設置場所や蒸気圧力、ドレン量などを確認し、適した機種・構成を選びます。故障割合の数字だけで一律に交換を決めるのではなく、工場ごとの使用条件と管理上の課題を整理することが大切です。「自社の設備に使えるか知りたい」「トラップの台数や使用条件を整理したい」という段階でも、スチームセーバーの相談フォームからお気軽にご相談ください。
A. いいえ。DOEの15~30%は、3~5年間メンテナンスされていない蒸気システムで、故障して生蒸気が漏れている可能性を示した割合です。世界全体の平均値や年間故障率ではありません。
A. 故障がなくなるとは限りません。DOEは、定期的なメンテナンス計画があるシステムで、漏れトラップの割合を5%未満とする目安を示しています。点検後の修理や記録まで続けることが重要です。
A. 湯気だけでは判断できません。正常なドレン排出でもフラッシュ蒸気が発生します。形式や運転条件を確認し、温度と音・振動などを組み合わせて判断します。
A. 協和機工では、主管・トレース管向けとしてご案内しています。設置場所、用途、蒸気条件に応じて適用可否と機種・構成を確認するため、まずは現在の使用条件をご相談ください。
海外の資料や調査事例から分かるのは、スチームトラップを設置したままにせず、現在の状態を把握する必要があるということです。
では、蒸気を漏らすトラップが1台あった場合、年間ではいくらの損失になるのでしょうか。次回は「スチームトラップが1台故障すると年間いくら損する?」をテーマに、漏洩量、年間運転時間、蒸気単価をもとに考えます。
故障の台数を知ることから、損失金額を知ることへ。自社の蒸気設備を見直す判断材料につなげていきます。
「自社のトラップの状態が分からない」「蒸気ロスの対策を相談したい」という方は、お気軽にご相談ください。

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資料確認日:2026年10月8日。
監修:協和機工 菊本佑希(ファシリティーソリューショングループ:リーダー)
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