Column 技術・業界コラム
2026.10.28
監修:協和機工株式会社 代表取締役 三家本輝男
この記事の要点
「トラップを交換しても、また漏れる」「台数が多く、点検と交換に手が回らない」。蒸気設備を管理する現場では、機器の購入費より、使い続ける間の蒸気ロスや保全の負担が課題になることがあります。
従来の可動式スチームトラップは、用途に合った機種を選び、適切に保全すれば有効に働きます。一方、主管やトレース管で弁の劣化による漏れを繰り返しているなら、構造の異なるスチームセーバーを比較する意味があります。本稿では、交換で何を改善できるかと、適用に必要な条件を整理します。
蒸気が熱を渡して水に戻った凝縮水を「ドレン」と呼びます。スチームトラップの役割は、ドレンを排出し、生蒸気の流出を抑えることです。本稿の「従来型」は、主にディスク式・フロート式・バケット式など、可動部を持つ方式を指します。
弁や弁座が摩耗したり、異物が挟まったりして閉まりにくくなると、生蒸気が下流へ漏れる原因になります。逆に排出経路の閉塞などでドレンを出せなくなると、上流にドレンがたまるおそれがあります。ただし、排出不良には機器故障以外に、能力不足や出口側圧力の上昇による差圧不足も関係します。交換だけで解決するとは限りません。
海外メーカーSpirax Sarcoの保全資料も、正常・蒸気漏れ・流れの閉塞を区別せずに診断すると、健全なトラップまで交換してしまうと指摘しています。

漏れを直しても、次の不具合を発見するまで蒸気が供給され続ければ、その間に損失が積み重なります。米国DOEは定期的な点検・試験・修理と、その結果や削減効果の記録を勧めています。DOE Steam Tip Sheet #1(2012年)
例えば、漏れ量1kg/hの状態が年間4,000時間続けば、年間4,000kgです。蒸気単価を2〜7円/kgとすると、年間8,000〜28,000円になります。自社の測定値・運転時間・蒸気単価に置き換えて計算してみてください。

協和機工が国内の工場で行ったドレン捕集試験では、蒸気主管のディスク式トラップ1台から毎時約6.7kgの漏れを測定しました。24時間操業で運転時間が長く、その工場の蒸気単価で換算すると年間約44万円に相当しました。
別の工場では、ほぼ吹き放しだったフロート式トラップを調整し、作動が戻った後も毎時約1.4kgの漏れが残っていました。年間では約7.6万円に相当します。外から見て直ったように見えても、漏れが残ることがあります。修理しても同じ要因で漏れを繰り返す箇所は、構造から見直す候補になります。
測定方法と条件は、スチームトラップが1台故障すると年間いくら損する?で詳しく紹介しています。いずれも特定の設備での測定結果です。
正常な高温ドレンでも、圧力が下がると一部が再蒸発してフラッシュ蒸気になります。白い湯気や温度だけで生蒸気漏れの量を決めず、運転状態と適切な診断を合わせて確認することが大切です。
協和機工のスチームセーバーは、主管・トレース管向けの柱状孔式スチームトラップです。ステンレス鋼球の0.8mmの孔を流れるドレンによって出口をシーリングし、随伴蒸気の流出を抑えます。スチームセーバーの構造と用途

ドレンを排出するために開閉を繰り返す弁がないため、その弁の摩耗を原因とする漏れの要因を持ちません。既設トラップで同じ要因の修理や交換を繰り返している場合に、構造を変えるメリットがあります。
スチームセーバーは定期的な分解清掃が不要で、閉塞時にはブロー・逆洗で対応できます。ただし、排出状態の確認やストレーナー、周辺配管の保全は引き続き必要です。閉塞時の対応手順や点検内容は、導入時にご案内します。
耐久性は公表仕様で10年です。実際の設置条件での適用可否や保証範囲は、個別にご相談ください。
蒸気使用量が減り、ボイラーの燃料消費も下がれば、燃料費と燃料由来のCO₂排出量の削減につながります。削減効果は、既設の状態と更新後の運転で変わります。正常に管理された従来型との比較と、漏れたままの機器との比較は分けて考えましょう。
可動式には、負荷に応じて排出を調節できる方式があり、フロート式は変動するドレン負荷への追従が利点です。ディスク式にも小型で堅牢などの特徴があります。用途・圧力・空気排出の必要性に応じて選べることが、従来型の強みです。
| 比較項目 | 従来の可動式 | スチームセーバー |
|---|---|---|
| 排出の仕組み | 形式ごとの原理で弁を開閉・調節。連続排出する方式もある | 柱状孔を通るドレンでシーリングし連続排出 |
| 利点 | 用途や負荷変動に応じた機種を選べる | 排出用の開閉弁の摩耗要因を持たない |
| 保全の着眼点 | 摩耗、異物、作動、修理・交換履歴 | 孔の閉塞、排出状態、ストレーナー、周辺配管 |
| 適用判断 | 形式・機種の圧力、差圧、能力などを確認 | 主管・トレース管が対象。熱交換器には使用不可 |
| 費用比較 | 健全な機器の修理継続案も含める | 個別見積りと実測に基づいて比較する |

孔の大きさが一定の方式では、圧力やドレン負荷が大きく変動すると、排出能力の不足や生蒸気の流出が問題になる可能性があります。固定オリフィス方式の一般的な留意点として海外メーカーの技術資料でも挙げられており、導入前に始動時と定常時の両方を確認します。
導入候補箇所では、少なくとも次の条件を揃えます。
協和機工では、熱交換器向けのO-TRAP(オートラップ)も取り扱っています。熱交換器用は蒸気圧力やドレン量、運転条件に応じた機種選定が必要で、仕様表だけでは判断が難しい場合があります。適した機種をご案内しますので、ぜひ一度、協和機工へお問い合わせください。O-TRAPを含む取扱製品のご案内
スチームセーバーの公式仕様は、最大使用圧力1.0MPa、ドレン排出能力25kg/h(0.5MPa)・35kg/h(1.0MPa)です。実設備への適用は、差圧・背圧を含む条件を協和機工で確認したうえで判断します。
TCOは購入費だけでなく、点検、清掃、修理・交換、蒸気損失などを含めた総費用です。比較期間を10年とし、両案で同じ費用項目を集計します。従来型を漏れたまま放置する前提ではなく、必要な修理・交換を行う案と比べます。
以下は計算方法を示すための仮定例です。金額・更新時期・蒸気量の差は、製品価格や実測性能を示すものではありません。
| 計算の前提 | 従来型を保全して使用 | スチームセーバーへ更新 |
|---|---|---|
| 導入・施工費 | 8万円 | 8万円 |
| 点検費 | 年2,000円 | 年2,000円 |
| 期間内の更新費 | 3・6・9年末に各3万円 | 期間内更新なしと仮定 |
| 比較対象の運転時間 | 年4,000時間 | 年4,000時間 |
| 蒸気の削減可能な単価 | 4円/kg | 同左 |
ここでは両案に共通する費用を除き、従来型案で余分に必要となる正味の蒸気量だけを差分費用として加えます。この差は、修理後も含む10年間の平均で、瞬間的な漏れ量ではありません。
比較対象TCOは、導入・施工費+10年間の点検費+期間内更新費+差分蒸気費です。工場全体の蒸気費を含む総額ではありません。
| 正味の蒸気量の差 | 10年の差分蒸気費 | 従来型の比較対象TCO | スチームセーバーの比較対象TCO | 差額 |
|---|---|---|---|---|
| 0kg/h | 0円 | 19万円 | 10万円 | 9万円 |
| 0.5kg/h | 8万円 | 27万円 | 10万円 | 17万円 |
| 2kg/h | 32万円 | 51万円 | 10万円 | 41万円 |
例えば0.5kg/hの差分蒸気費は、0.5×4,000×4×10=80,000円です。単価を2〜7円/kgにすると4万〜14万円、比較対象TCOの差額は13万〜23万円になります。先に紹介した実測例(毎時約1.4〜6.7kg)のように漏れが大きい箇所では、差はさらに広がります。

一方、従来型が10年間更新不要で、両案に正味の蒸気量の差がなく、導入費が従来型8万円・スチームセーバー12万円なら、点検費を含めて従来型10万円、スチームセーバー14万円となります。購入価格の差や既設の状態によって、結果は逆転します。
実際の試算には、ドレン捕集試験費、閉塞対応費、ストレーナー保全費、停止・施工費、撤去費なども加えます。蒸気単価は、固定費込みの社内配賦単価ではなく、使用量が減ったときに実際に削減できる費用で考えます。
最初に、台帳・点検結果・修理履歴を整理し、繰り返し漏れる箇所や点検しにくい主管・トレース管を候補にします。適用条件を確認したうえで、既設の修理継続案と更新案を比べ、導入後も始動時・定常時の排出状態を確かめます。
協和機工では実設備のドレン捕集試験と、蒸気ロス・年間損失・導入効果を整理する技術レポートをご用意しています。試験費用も比較に含め、削減効果と適切なドレン排出の両方を確認することが、納得できる更新判断につながります。ドレン捕集試験の案内
A. いいえ。正常に管理され、設備の負荷や圧力に合っている機器は継続使用も選択肢です。故障履歴、保全負担、正味の蒸気削減量を比較して更新範囲を決めます。
A. スチームセーバーは熱交換器には使えませんが、協和機工では熱交換器用のO-TRAP(オートラップ)も取り扱っています。蒸気圧力やドレン量などに応じた機種選定が必要ですので、ぜひ一度、協和機工へお問い合わせください。
A. いいえ。開閉弁の摩耗要因は持ちませんが、閉塞、排出状態、ストレーナーや周辺配管の確認は必要です。点検内容とブロー・逆洗の手順を導入時に確認します。
A. 必ず安くなるとは限りません。本文は仮定例であり、購入・施工費、修理・交換費、正味の蒸気量の差、単価で結果が変わります。既設の修理継続案を含めて実条件で比較します。
スチームセーバーを導入するメリットは、対象設備の条件が合う場合に、開閉弁の摩耗要因を減らし、蒸気ロスと保全負担を見直せることです。まずは用途・圧力・ドレン量・修理履歴を整理し、自社でどの費用を減らせるか確認してみませんか。
次回は、実設備の蒸気ロスや導入効果を確認する「ドレン捕集試験」をご案内します。試験の内容や、測定結果を修理・更新の判断にどう役立てるかをご紹介する予定です。
資料確認日:2026年10月26日。図は資料を参考に独自制作。TCOの金額・更新時期・蒸気量差は説明用の仮定です。実測例は協和機工のドレン捕集試験の結果を、工場が特定されないよう丸めて示しています。
監修:協和機工株式会社 代表取締役 三家本輝男

ご質問・ご相談など、なんでもお気軽にご連絡ください。
お問い合わせはこちら
(受付時間 8:00~17:00)