Column 技術・業界コラム
2026.10.12
監修:協和機工株式会社 代表取締役 三家本輝男
ASEAN Centre for Energy(ACE)は、2026年10月8日に「第9次ASEANエネルギー見通し(AEO9)」を公表しました。エネルギーの将来像を示すこの報告書には、工場が身近な設備で取り組める省エネ対策も紹介されています。[1]
注目したいのは、圧縮空気と蒸気です。第5章(報告書PDFの138ページ)では、技術的に成熟し、直接実施できる産業の省エネ対策を説明する中で、圧縮空気の漏れ削減や運転圧力の低減、スチームトラップの調査と定期保守による損失削減などを挙げています。[1]
協和機工がこれまで紹介してきたエア漏れ対策や蒸気管理と同様の対策が、海外のエネルギー見通しでも挙げられています。今回は、この最新レポートを出発点に、圧縮空気と蒸気の改善が持つ価値を、海外の公開事例とともに読み解きます。
この記事の要点
ASEANの報告書が扱うのは東南アジアのエネルギーですが、圧縮空気を電力でつくり、蒸気を燃料でつくる設備の仕組みは、日本の工場にも共通します。協和機工は、こうした身近な設備の漏れや不具合を見直すことを、省エネの出発点としてお勧めします。
派手さはありません。それでも、既存設備の無駄を減らす改善は、年間の損失額と対策費用を比較し、費用対効果を確かめながら進められます。レポートの指摘を、現場での実行につなげるために、具体的な事例を見てみましょう。
海外の動向を、日本の工場に引き寄せて考えるうえで、電気料金の変化も見逃せません。電気事業連合会が資源エネルギー庁「日本のエネルギー」を出典として掲載するデータでは、産業用の平均単価は2010年度の14.33円/kWhから、2024年度には26.23円/kWhへ上昇しています。2010年度比で約83%、2020年度比でも約48%高い水準です。[5]

毎年上がり続けているわけではありません。2022年度の27.55円/kWhから2023年度は24.89円/kWhへ低下し、2024年度は26.23円/kWhとなっています。それでも、以前より高い水準にあることが分かります。[5]
同じ量のエア漏れでも、電気単価が高ければ、失われる金額は大きくなります。 そのため、漏れを減らして消費電力を削減できれば、電気単価が低かった時期よりも金額面の効果が大きくなる可能性があります。
なお、このグラフは産業用の年度平均値であり、個別の工場の契約単価ではありません。実際の削減額を試算する際には、自社の契約と請求書に基づく削減可能な従量単価を使用します。以下の試算表の25円/kWhは計算例の仮定であり、この平均値や現在の全国一律料金を示すものではありません。
蒸気の省エネを考える際には、ボイラーで使う燃料の価格にも目を向けたいところです。ここでは、蒸気製造に使われる燃料の一つであるA重油の価格推移を紹介します。

新電力ネットが資源エネルギー庁を出典として掲載する年次データでは、A重油の全国大型ローリー納入価格は、2020年の58.5円/Lから2025年の99.8円/Lへ、約71%上昇しています。途中で価格が低下した年もありますが、2020年と比べて高い水準です。[6]
燃料価格が高くなると、同じ量の蒸気をつくるための燃料費も増えます。 ボイラーの効率や蒸気条件などが同じであれば、蒸気漏れを減らし、その分の燃料使用量を削減することの金額面の価値も大きくなります。
この図は蒸気単価そのものではありません。蒸気の製造コストは、使用燃料、ボイラー効率、蒸気圧力、給水温度、ドレン回収条件などで変わります。また、電気料金の図は年度平均ですが、このA重油の図は暦年の年次値です。個別の工場での効果は、自社の燃料購入単価と運転条件で試算します。

圧縮空気の原料は、周囲にある空気です。しかし、使える圧力まで圧縮するには、コンプレッサーを動かす電力が必要です。
ホース、継手、カプラーなどから漏れているのは、電気を使ってつくった空気。漏れた分を補うためにコンプレッサーが余分に働くと、その分の電気代がかかります。
米国エネルギー省(DOE)の資料では、エア漏れによってコンプレッサーの吐出量の20〜30%が失われる場合があるとされています。[2] これはすべての工場に当てはまる数字ではありませんが、見過ごされている漏れを調べる価値を示しています。
米国のGAST Manufacturingの事例では、電力会社Indiana Michigan Powerの省エネプログラムを通じて、エア漏れ調査と修理を実施しました。
調査で発見した漏れは190か所超。そのうち75%超は直ちに修理でき、年間77万9,000kWh超、年間9万3,500ドル(1ドル=150円換算で約1,400万円)の削減を見込んだと報告されています。[3]
この事例のポイントは、漏れている場所を探し、修理するという身近な改善を積み重ねたことです。一つひとつは小さな継手や接続部でも、数と稼働時間が重なると、無視できない損失になります。
ただし、エア漏れを減らした割合が、そのまま電力削減率になるわけではありません。コンプレッサーの制御方式や台数運転によって効果は変わります。修理後は、必要に応じて運転設定を見直し、同程度の生産条件で消費電力を確認することが大切です。[2]
自社の圧縮空気でどこから漏れているかを把握したい場合は、エア漏れ検査の相談フォームからお気軽にご相談ください。
蒸気は、ボイラーで燃料を使ってつくります。加熱や乾燥などの工程で役立つ一方、漏れや設備の不具合があると、せっかくつくった熱を十分に利用できません。
見直したい設備の一つが、スチームトラップです。蒸気が熱を渡すと、水である「ドレン」に戻ります。スチームトラップは、そのドレンを排出しながら、必要な蒸気を逃がさない役割を担います。
開いたままの故障では、蒸気が流出して燃料の無駄につながります。一方、ドレンが排出されない不具合では、加熱不良やウォーターハンマーにつながる場合があります。省エネと設備の安定運転の両面から、状態を確認することが重要です。[4]
Spirax Sarcoが公表する化学工場の事例では、工場内の1,344台のスチームトラップを調査し、10.94%が開いたまま故障していることを確認しました。
その後、故障したトラップの一括修理や旧型トラップの更新などを含む最適化を進め、年間57万ドル(1ドル=150円換算で約8,550万円)のエネルギー費削減を見込み、投資回収期間は1年未満と報告しています。[4]
これはメーカーが公表した特定工場の事例で、トラップ最適化を含む改善全体の結果です。1台の交換効果や、特定製品だけの効果を示すものではありません。しかし、普段は目立たない蒸気設備を調べることで、大きな改善の機会を見つけられることが分かります。
スチームトラップの状態や、交換を含む改善を検討したい場合は、スチームセーバーの相談フォームからご相談いただけます。製品についてはスチームセーバーのページもご覧ください。
漏れや不具合を発見したら、次に確認したいのは年間の損失額と対策費用です。
次は計算方法を説明するための仮定による試算です。実際の施工事例や見積金額ではありません。
| 対策 | 仮定する改善量と単価 | 年間の削減額 | 仮定する対策費用 | 単純回収期間 |
|---|---|---|---|---|
| エア漏れ修理と運転調整 | 消費電力が平均5kW減少、年間4,000時間、25円/kWh | 50万円 | 30万円 | 約7.2か月 |
| スチームトラップ改善 | 正味の蒸気削減量10kg/h、年間4,000時間、蒸気の削減可能な製造費7円/kg | 28万円 | 8万円 | 約3.4か月 |
エアの場合は「5kW×4,000時間×25円=50万円」、蒸気の場合は「10kg/h×4,000時間×7円=28万円」です。単純回収期間は、対策費用を年間削減額で割って求めます。
蒸気の7円/kgは、本文で紹介したA重油価格(約100円/L)とボイラー効率85〜90%程度を前提に、燃料費だけで概算した値です。実際の蒸気単価は、燃料の種類や購入条件、算定に含める費用によって会社ごとに大きく異なり、2円/kg程度で管理している工場もあります。試算の際は、必ず自社の蒸気単価を使ってください。
ここでいう対策費用には、調査費、部品代、施工費を含めて考えます。蒸気単価は燃料、水、ボイラー効率、ドレン回収条件などで変わり、固定費を含めた平均単価がそのまま削減可能額になるとは限りません。また、実際の回収期間は稼働時間、修理後の状態、維持費によって変わります。
大切なのは、「安いから交換する」だけで判断せず、失われているエネルギーを金額に直し、効果の大きい箇所から改善することです。
取り組みは、次の順序で進めると判断しやすくなります。
運転中に調査できる箇所があっても、修理や交換には設備停止が必要な場合があります。圧力の変更も、生産設備に必要な圧力を確認してから行います。現場条件に合わせて、小さく始められる範囲を決めることが大切です。
A. いいえ。漏れを減らした割合が、そのまま電力削減率になるわけではありません。コンプレッサーの制御方式や台数運転によって効果は変わるため、修理後に運転設定を見直し、同程度の生産条件で消費電力を確認します。
A. 燃料の種類や購入条件、算定に含める費用によって会社ごとに大きく異なります。本記事の7円/kgは計算例で、2円/kg程度で管理している工場もあります。自社の燃料購入単価と運転条件で試算してください。
A. 運転中に調査できる箇所もありますが、修理や交換には設備停止が必要な場合があります。生産への影響を踏まえ、小さく始められる範囲から計画します。
A. 紹介した事例は海外の個別工場の結果で、そのまま当てはまるわけではありません。ただ、圧縮空気を電力で、蒸気を燃料でつくる仕組みは共通しており、自社設備の状態を調べる参考になります。
エア漏れを止める。スチームトラップを点検し、不具合を改善する。どちらも工場では身近な作業です。
だからこそ、見過ごしていた電気代や燃料代の無駄を減らす、現実的な出発点になります。大きな設備投資を検討する際にも、まず既存設備の状態を把握すれば、その後の投資判断に役立ちます。
協和機工は、工場の身近な省エネ対策として、圧縮空気と蒸気の見直しをお勧めします。派手さはなくても、費用と効果を確かめながら進められる改善です。
「どこから手をつければよいか分からない」「漏れや不具合を金額で把握したい」という場合は、協和機工へご相談ください。エア漏れ検査や、スチームセーバーを含む蒸気設備の改善について、現場条件に応じた検討につなげます。


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資料確認日:2026年10月12日。
監修:協和機工株式会社 代表取締役 三家本輝男
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