コンプレッサーのエアーにオイルが混じる原因と対策を徹底解説!
エアコンプレッサーのエアーはさまざまな使い方があります。生産機械のエアシリンダ作動以外に、エアー自体の吹き付け用に使うこともあるでしょう。
生産製品にエアーに交じってオイルが付着すれば異物付着不良として品質問題になる場合も少なくありません。コンプレッサーの経年劣化によって排気エアーにオイルが混じることは仕方がないのでしょうか。
本記事では、コンプレッサーのエアーにオイルが混じる主な原因と対策を解説します。
目次
コンプレッサーのエアーにオイルが混じる原因
工場で使われているコンプレッサーは、用途によってレシプロコンプレッサー、スクリューコンプレッサーの2つのタイプに分けられます。
それぞれの機種でオイルの使われ方に違いはありますが、エアーにオイルが混じる原因は清掃不足とメンテナンス不足、点検の見落としによる部品の劣化の可能性が高いでしょう。
レシプロコンプレッサーの場合
エアータンクを横に倒した構造になっており、その上にピストンなどのモーターや圧縮機が搭載されている小型のものがレシプロコンプレッサーです。
レシプロコンプレッサーにおけるオイルが混じる主な要因は、シリンダやピストン、ピストンリングなどの消耗、変形、硬化であり、オイルシールの機能が低下しオイルが漏れ出てしまうケースが多々あるでしょう。
コンプレッサーの金属部品同士のつなぎ目には、気密性を保つためにオイルシールやゴム部品が多く使用されていますが、ゴム部品はオイルや熱、振動によって変形や硬化が生じやすい特徴があります。
スクリューコンプレッサーの場合
中型のコンプレッサーで、四方をボックスで囲まれた形が多いのがスクリューコンプレッサーです。
スクリューコンプレッサーの場合は圧縮空気を溜めるシステム上、わずかに油分が混ざりやすい傾向にあります。
混ざったオイルや水を吐出するために、フィルターやセパレータを通じて除去する仕組みです。
しかし、消耗が激しい場合や清掃や整備が行き届いていない場合は、圧縮空気中の油分や水分が完全に取り除かれずに排気と共に吐出されます。
コンプレッサーのオイルが漏れているとどうなる?
毎日の点検でいつもよりオイルの減り具合が早いときは、漏れている可能性が高いでしょう。オイルが漏れているとコンプレッサー本体の破損の原因につながります。
コンプレッサー本体の破損の原因につながる
機械オイルの主な役割は内部の回転部分の潤滑、防錆、冷却、密封などの耐久性の維持です。
コンプレッサーの場合、オイルが漏れているとシリンダーやピストン、スクリューローターなどの金属部品の破損の原因になるでしょう。
オイルが潤滑することで摩耗や錆から保護し、機械の密封性を維持します。また同時にシリンダーやピストン、スクリューローターの運転時の摩擦による発熱をオイルが冷却する機能も重要です。
潤滑、防錆、冷却、密封の機能はともに関連性があり、潤滑に稼働しないことで摩耗が発生したり機械部品が高温になったりします。
摩耗や高温のまま使用すると振動や熱でゴム部品の劣化が進み、オイル漏れを含めてコンプレッサー本体の破損の原因になるでしょう。
空気品質を低下させる
オイルが漏れてしまうと圧縮空気に不純物が混入して空気品質を低下させます。なぜならコンプレッサーのオイルが漏れてしまうと、シリンダーをはじめとする部品が円滑に稼働しなくなりガタツキが生じるからです。
エアガンとして排出された圧縮空気に油分が混入すると、生産する製品に不純物が飛散してしまいます。
コンプレッサーにおける油分以外の不純物は以下のとおりです。
- 錆
- ホコリ・ゴミ
- 水分
コンプレッサーの部品にガタツキが生じると隙間からオイル・錆・ホコリが混入します。
錆やホコリはコンプレッサーの摩耗をさらに進め、生産機械のエアシリンダーなどの部品の損傷の原因になる可能性が高いでしょう。
メンテナンスコストが増える
機械の故障は連動して起こることが少なくありません。コンプレッサーも毎日のドレン抜きやオイルゲージの目視や異音の確認、週一回のフィルター掃除などで異常に早く気付くことができれば、わずかな時間の停止などで済みます。
しかし、オイルゲージを見ていなかったりコンプレッサー付近の油汚れに気付かなかったりする点検漏れは、時間が経てば経つほど他の部品に影響を与えるでしょう。
次のようなことが故障の例として挙げられます。
- オイルが減っていることに気付いていない
- ピストンやシリンダーが徐々に摩耗していく
- 摩耗による鉄粉がさらに摩耗を制御できずにひどくなる
- 摩耗や動力による発熱で付近のゴム部品の劣化が進む
- 摩耗や気密性が悪くなり圧縮空気にオイルや錆が混入する
5の状態で気付いた時には、ピストン、シリンダー、オイルシール、ゴム部品の交換が必要になっており、交換中の生産は不可能です。
コンプレッサーのメンテナンス費用だけでなく時間ロスによる生産性の低下の損失も発生します。
コンプレッサーのオイルが早く減る原因
毎日の始動前にオイルゲージからオイル量と色を確認する必要があります。オイルは密閉されたオイルタンクや機械内を循環しているので、通常であれば1年ほどは減ることはないでしょう。
予想以上に早く減っている場合は原因を突き止めなくてはなりません。
部品の損傷や摩耗
オイルの減りが早い場合は、オイル漏れの箇所があるか、コンプレッサーの中の部品が損傷している可能性が高いでしょう。
注油口や排油ドレンから漏れている場合はシールテープなどで漏れを防ぎます。工具を使ってきちんと閉めることが重要です。
他に考えられる原因としては、主に以下のようなことが挙げられるでしょう。
- ピストンリングの摩耗
- シリンダーの損傷
- セパレータの汚れ
- オイル回収配管の詰まり
- 排気圧の低下
ピストンリングやシリンダーの摩耗・損傷は、過去に古いオイルを使っていたことが原因の可能性があります。
セパレータの汚れ、オイル回収配管の詰まりは、錆や摩耗した鉄粉などが付着することによって起きやすい現象です。
排気圧の低下は、コンプレッサーの圧力バルブを回して調整できます。適正な排気圧になっていない場合は、排気時にセパレータによって空気とオイルの分離が正常に行われていない可能性があるため点検が必要です。
いずれも機種によって分解、組立の技術が必要なので安全のためにもメーカーや専門業者に依頼することをおすすめします。
オイルの粘度が適正ではない
コンプレッサーのオイルは主に2種類あります。違いは粘度(ドロドロ感)です。
- ISO VG68 レシプロコンプレッサー用
- ISO VG32 スクリューコンプレッサー用
オイルの番号の数字が大きいほど粘度が高くなっています。スクリューコンプレッサーにレシプロ用のオイルを入れると、圧縮空気が排気前に通るセパレータで空気とオイルの分離がうまくできません。
空気とオイルの分離ができないまま圧縮空気とともに排気されるのでオイルが減っていきます。
また粘度が高いためにセパレータで分離したオイルが流れ落ちにくく、セパレータに溜まりやすくなるでしょう。
温度や湿度が過酷な環境下にある
コンプレッサーはなるべく低温・低湿度の環境下での使用が効率よく稼働します。目安としては設置場所の温度が2°C〜40℃、湿度は80%以下が望ましいでしょう。
40℃以上の高温の空気を吸入した場合、ベアリングやピストンリングの消耗が激しくなりオイルの消費が早くなります。
空気は圧縮するとさらに発熱するので、コンプレッサーはさらに高温になり部品の消耗を促してオイルの消費量が増えるでしょう。
湿度は80%以下の環境が適切です。湿度が高いとエアタンク内に水が発生しやすく、セパレータなどの目詰まりに発展します。また、電源に近いと錆やすい上に漏電などを誘発する危険性も高くなるでしょう。
コンプレッサーのオイルに関するよくある質問
コンプレッサーなどの付属機器については、トラブルがない限りあまり知識を得る機会が少ないので、いざという時に分からないといったことがよくあります。
ここでは、コンプレッサーのオイルに関するよくある質問に回答します。
コンプレッサーのオイル除去は可能?
オイルフリーのコンプレッサーを使用することでオイル除去は可能です。オイルコンプレッサーの場合は、オートドレンを排気口の次に取り付けることで効果があります。
エアガンとしての吹付けの使用頻度が少ないのであれば、コンプレッサーとホースまでの間にエアフィルターとオイルミストセパレータを付けると油分付着防止に効果的です。
後付け部品としてはオイルミストの除去を専門としたフィルターも販売されています。
数社が販売していて効果はオイルフリーコンプレッサーの排気と同等の品質レベルと謳われているため、試してみるのも一つの方法です。
コンプレッサーからドレンが出るのはなぜ?
ドレンとはコンプレッサーに吸引された空気に含まれる水蒸気がエアータンク内で圧縮・充填されたあと、温度が冷やされていく中で結露して水滴となった水のことです。
空気は高温になると飽和水蒸気量が高くなります。夏場の高温多湿の空気を吸引する時は、特に水が溜まりやすい状態です。
ドレンの対策としては、エアータンクの排気口の次にオートドレンを取り付けることが挙げられるでしょう。それにより、半自動での排水が可能となります。
また、毎日の終業後にタンク下部のドレンのバルブを緩めて排水することが重要です。この排水の中にオイルが混じっている場合は、ピストンリングなどの摩耗によるオイル漏れの可能性があります。
まとめ
コンプレッサーのオイル漏れは、毎日の点検やメンテナンスで防止することができます。
毎日のドレン抜きのときに「水は適量か」「オイルが混じっていないか」「オイルゲージ内のオイル量や色は問題ないか」といった点に注意することでコンプレッサーのシリンダーやピストンリングの消耗を見つけ出せるでしょう。
また、機械の仕組みによって適正なオイルが設定されているため、コンプレッサーの種類によって適切なオイルを使用することが重要です。
適切な点検とメンテナンスにより、安心して使えると同時にコンプレッサーの寿命を長くすることができるでしょう。
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