高圧コンプレッサーと常圧コンプレッサーの違いを理解しよう
エアコンプレッサーは圧縮する気体や圧縮原理、潤滑方式、冷却方式などで分類されるケースが多々あります。そのなかで吐出圧力の圧力範囲においては、高圧コンプレッサーと常圧コンプレッサーに分類されることはご存知でしょうか。
この記事では、そんな2種類のコンプレッサーについて、特徴や用途、選ぶポイントなどについてご紹介します。
Contents
コンプレッサーの高圧と常圧の違い
コンプレッサーとは吐出圧力が0.1MPa(1.0197kgf/cm2)以上のものを指しますが、そのなかで、吐出圧力が2.0MPa以上のものが高圧コンプレッサーです。
ここでは、通常100V電源(50/60Hz)で動作する持ち運びできるタイプの高圧と常圧コンプレッサーの特徴や用途について説明します。
高圧タイプの特徴
高圧コンプレッサーの最大の特徴は空気圧の高さです。この特徴を最大限発揮できるエアー工具が建築現場でよく見かける釘打ち機になります。
高圧専用の釘打ち機は常圧専用機よりコンパクト(小型・軽量)なため操作性がよく、加えて反動が小さいことから作業者への負担が小さいのがメリットです。
そのほかに、高圧コンプレッサーは高圧エアーに耐えられる機構に設計されているため、機器重量が大きい、ピストンや回転部など摺動部分への負担が大きく、摩耗・消耗が早い、などの特徴があります。
常圧タイプの特徴
常圧(一般圧とも言います)モデルの場合は、先ほど同様に釘打ち機を例に比較すると、エアー切れを起こしにくく、長時間打ち込み作業が可能な点がメリットになります。
また、釘打ち機以外のエアー工具も一般的に0.9MPa以下で動作するものが多いため、幅広い用途に対応できる汎用性が特徴です。
機器価格も高圧コンプレッサーと比較して安価で、メンテナンス頻度も低いことから、一般的な作業現場やDIYなど、様々な場面で使用されています。
用途の違い
高圧モデルと常圧モデルの用途は以下のとおりです。それぞれの特徴と実際の使用目的に合わせて選択することが重要になります。
高圧コンプレッサー
高圧専用釘打ち機など高圧専用のエアー工具に搭載されており、プロの現場やより高い圧力やパワーを必要とする場合に使用されますが、一部の機種には常圧も同時取出可能なものもあります。
常圧コンプレッサー
一般的なエアー工具に使用できるためDIYでも使用できる汎用性の高さが特徴です。塗装作業からタイヤの空気入れ、ブロー清掃など多様な用途に適しています。
サイズと価格
高圧コンプレッサー、常圧コンプレッサーともに小型から大型まで各メーカーでラインナップされていますが、同スペックで比較した場合、一般的に高圧コンプレッサーの方が機械自体が大きくなる傾向があります。
価格についても実勢価格(販売価格)ベースで見ると高圧コンプレッサーがより高い傾向です。
コンプレッサーの役割と特徴とは
ここでコンプレッサーの役割と特徴について整理しましょう。そもそもコンプレッサーの役割と特徴は何でしょうか。
ここではコンプレッサーの役割と、コンプレッサー(エンジンコンプレッサー除く)が非常に大きな電力消費をしていることについて説明します。
圧縮空気を作り出す
コンプレッサーは圧縮機と呼ばれ、その役割は圧縮空気を作り出すことです。
圧縮空気は主に釘打ち機などエアー工具の動力源や塗装・清掃などのブロー、タイヤや浮輪などの膨張、エアシューターの物品搬送など様々なシステムに利用されます。
このような利用目的に合わせて圧縮空気の圧力やクリーン度、圧力の安定性などの要求項目は変わってくるでしょう。
電力消費が非常に高い
モーターを動力源とするコンプレッサーの場合、電力消費は非常に高くなります。高出力のモーターが長時間連続して稼働するため、作業にかかわるエネルギーコストに占める割合は小さくありません。
一般的な製造工場では、施設全体の総需要電力量の20〜25%がコンプレッサーの消費電力量と言われています。
参考:工場におけるコンプレッサー設備の省エネ方法|空気調和・衛生工学会
逆に言えばコンプレッサーの定期点検や予防保全、高効率な最新機器への更新などを実施することで、電気料金の低減が可能です。
コンプレッサーを選ぶときのポイント
コンプレッサーには様々な種類があります。それぞれの特徴をよく理解した上で、用途に合わせた機種を選定することが大切です。
参考:エアコンプレッサーとは | マックス株式会社
オイル式かオイルレス式で選ぶ
摺動部に潤滑油(オイル)を使用するオイル式と使用しないオイルレス式があります。オイル式は潤滑効果により摺動部が摩耗しにくく、各部への負荷が小さいため、製品寿命が長いことがメリットです。
一方で、吐出空気にオイルが含まれるため、用途に制限がある、オイル交換などメンテナンスに手間がかかるなどのデメリットがあるでしょう。
オイルレスは吐出空気にオイルが含まれない、メンテナンスが簡単といったメリットがある一方、オイル式より耐久性が劣る傾向があります。
空気タンクの容量で選ぶ
空気タンクは圧縮空気を一時的に保存しておく場所です。タンク容量が大きいほど、圧力変動を緩和でき、エアー供給を安定化できます。
また、タンク内でドレン化することから使用先への水分を減少させることが可能です。
一方で、起動や圧力低下後に復帰までに時間を要する、コンプレッサー本体が大きくなるというデメリットがあります。
最高圧力で選ぶ
圧縮空気をタンク内にどれくらいの圧力で溜めておけるか(最高圧力)についてもポイントになります。タンク内最高圧力が高ければ高いほど、同じタンク容量において作業量を増やすことが可能です。
しかし、タンク内最高圧力が高いほど、コンプレッサーは高価になる傾向があるため、使用する工具の要求圧力や台数、各工具の同時使用率など実際の使用状況を考慮した選定が必要になります。
静音性で選ぶ
コンプレッサーは運転音が大きいのが特徴です。そのため、住宅地や建物内での作業では、静音性が重要となり、低騒音タイプのコンプレッサーを選ぶ必要があります。
製品仕様書に記載されている通常運転時や静音モード時の騒音レベル(dB)を確認し、他製品と性能比較することが大切です。
作業環境に適した静音性を持つコンプレッサーを選ぶことで、周囲への配慮と快適な作業環境の実現を両立することができます。
メンテナンス性で選ぶ
高圧コンプレッサーは常圧コンプレッサーより頻繁な点検が必要で、摺動部への負荷が大きく部品交換も多くなる傾向があります。
また、一般的にオイルレスタイプはオイル交換不要ですが、摺動部分の部品交換頻度は高くなるでしょう。
使用環境や頻度など条件によっても変わりますが、高圧と常圧、オイル式とオイルレスでメンテナンス性が大きく異なります。機器選定のときはこれらの違いを考慮し、用途に合わせて適切なタイプを選ぶことが重要です。
コンプレッサーの圧力に関するよくある質問
ここまで高圧コンプレッサー、常圧コンプレッサーについて説明してきましたが、ここでコンプレッサーの圧力に関してよくある質問について回答します。
コンプレッサーを常圧から高圧に変換できる?
コンプレッサーを常圧から高圧へ直接変換することはできません。これは、両モデルの設計構造が異なるためです。
しかし、一部のメーカー製品では、高圧と常圧の両方に対応できる便利な機能を搭載した製品もラインナップされています。このような汎用性の高いコンプレッサーを使用することで、より効率的な作業環境の実現が可能です。
使用目的や作業内容を考慮し、製品を検討することをおすすめします。
常圧と高圧でホースに違いはある?
ホースにも違いはあり、高圧ホースは常圧ホースと比較して耐久性が高くなっており、またホース内径も小さくなっています。
また接続部や継手も高圧用のものが使用されており、常圧用とは互換性がない場合が少なくありません。価格も常圧ホースより一般的に高い傾向があります。
このように常圧ホースを高圧コンプレッサーで使用することは、漏れや破裂などの事故原因になるため、絶対に避けてください。
なお、高圧用ホースを常圧に使用すること自体はできますが、効率が非常に悪いため、それぞれの専用ホースを使用することをおすすめします。ただのホースと思わず、使い方に十分注意してください。
まとめ
高圧コンプレッサーと常圧コンプレッサーの違いについてご紹介しました。
高圧タイプは高価ですが、高圧エアー工具の操作性や各部品の故障率に優れています。一方で常圧タイプは汎用性の高さとコストに優れているため、使用状況に合わせて機器を選定することが大切です。
各メーカーの技術資料や仕様書で機器の詳細やシステム制御について調べることができますので、メーカーHPを参考にしてみてください。